11月度研究わくわく人生塾のご報告
2007年11月28日(水)18時30分から21時
森林レクリエーションと地域再生
講師: 大浦 由美(おおうら ゆみ)先生(和歌山大学経済学部観光学科准教授)
プロフィール:信州大学で林業経済学(農学修士)、名古屋大学で地域資源学(農学博士)
その後名古屋大学助手・大学院講師をへて2007年4月より和歌山大学経済学部
観光学科准教授。
専門は森林・林業政策、森林資源利用論。
大学での授業科目は、森林レクリエーション論、森林資源利用論、観光入門、
地域農林業研究(大学院)の4講座。
参加者22名

本年度の研究わくわく人生塾は観光学科の先生による5回シリーズで実施しています。今回
は第3弾で、観光政策上重要な位置を占める「森林」によるレクリエーションにスポットを当
ててお話を頂きました。
(Ⅰ)観光(=Tourism)と森林の関係について
(1)観光の定義は、「人が日常生活圏を離れ、再び戻る予定でレクリエーション(身
体的・精神的な再生)を求めて移動すること」とすると、森林地域におけるレク
リエーシション機能を追求することは観光政策上大変大きな位置を占めることに
なるのである。
(2)とくに現在の日本では、本来の林業としての営みができる森林づくりが困難とな
っている以上、森林を観光産業の場として利用し、都市生活者のレクリエーショ
ンに役立てることが農山村側から見ての「持続可能な森林業の確立」につながり
地域再生になることになるのである。
(Ⅱ)当日の内容は、以下の3点です。
(1)わが国の森林レクリエーションの歴史
①戦前は森林の「保護・管理」に留まっていた。
②森林レク事業の始まりは、「国設スキー場制度」(1959年)である。
③1960年代は第一次レク開発ブームで、ゴルフ場建設ラッシュ、無秩序な開
発が行われ、社会問題となる。
その後1970年代にレクリエーション整備をすすめるべきとの答申がなされ、
「自然休養林制度(1968年)」「レクリエーションの森制度(1973年)
」が発足し森林の公益的機能を重視した政策が行われるようになった。
④1980年代にかけてバブル期を迎え「民活型大規模リゾート開発ブーム」が
起こったが、そのほとんどがゴルフ場・スキー場・ホテルの3点セットであっ
たためその結果自然破壊もすすんだ。
⑤しかし1990年代にはバブルが崩壊し、ほとんどが需要を超えた開発だった
ため「赤字」となり、レク施設の経営が破綻状態になっていった。
(2)近年の新しい試み
①レク経営が苦しくなるなか、ニーズの面でもスポーツ・レジャー型レクの利用
が激減する一方で「森林探勝・森林浴・体験型」等の新しい需要が起こり、森
林レクにおいて新たな試みがなされるようになった。
②それは、従来の「レク施設単独利用型」から「都市と農村との交流・協働・環
境保全型」へと転換されるようなったことである。
これは農林業の衰退、限界集落等の問題を抱える農山村側と環境問題、ストレ
ス社会等を抱える都市市民側とが、双方の交流・協働を通じこれら諸問題を打
開しようというものである。
③このようなことからエコツーリズム/グリーンツーリズムが起こり、また森林
浴から森林セラピーへの動きが見られるようになった。具体的には「健康保養
の森」指定(1998年)、森林セラピー基地公募・認定(2005年)、ロ
ングトレイル(遊歩道)整備等が行われた。
(3)今後どのような方向を目指すべきか
①このような取組は、現在のところ行政先行であるが、今後は基礎研究の充実、
人材の育成、地域の幅広い産業との連携を行い、一過性に終わることのないよ
うしなければならない。
②そして「交流・協働・環境保全」をキーワードに、森林レクを森林・地域再生
に不可欠な地場産業として育成していくことである。
(Ⅲ)まとめ
(1)大学のホームページをみると大浦先生の研究テーマは「豊かな森林を育む社会
経済システムの実証的研究」となっています。このテーマは自然資源豊かな和
歌山を背景とする和大の観光学科としても適切でかつ重要であると感じます。
今後は社会連携を深め、地域に根ざした研究を続けると述べておられます。
大いに期待したいものだと思います。
(2)当日の新聞(11月28日付各紙)で、小田学長の「来年度の観光学部発足」
の記者発表の記事が掲載されたこともあり、参加者から観光学科に対する期待
の声が多く出ました。
(3)地域再生は、今や全国的な最重要課題です。地域再生の情報発信が和歌山から
なされ、全国すべての自治体が卒業生の就職先になるよう願っております。
報告者:浦 義弘(大学17期)
以上

中部地区での国有林の研究が中心だった講師が、国有林のほとんど無い和歌山に赴任され戸惑いながらも熱心に活動
されている姿が心強く感じられました。
農水省も世界的な温暖化や環境問題の後押しもあり、本腰を入れ国有林の間伐と国産材の活用に動き出そうとしてい
ます。私有林の多い和歌山でも観光学部の新設を契機に講師が中心になり地域再生の新しい和歌山モデルを作り、森
林所有者を巻き込んだ地域資源の掘り起こしなど、セラピーを取り入れた裾野の広い観光振興への期待の声が上がっ
ておりました。
地域振興に産官学と我々柑芦会の知恵を融合して大きな波を起こして欲しいとともに、是非とも協力させて頂きたい
と思いました。
森林とリゾート法(ゴルフ場開発など)での環境破壊が山の保水力と川や海に大きく影響すると共に、人工林の針葉
樹の管理の大切さや里山での広葉樹の保全の必要性を実感したひと時でした。
そして、身体的、精神的な再生であるRecreationとは基本的人権であるということを再認識させて頂きました。
大浦先生、出張などでお忙しいところ人生塾のために興味深い研究資料とレジュメをご準備いただき、楽しい講義を
本当にありがとうございました。
参考: 『森林セラピー基地マップ』(社)国土緑化推進機構
http://forest-therapy.jp/modules/tinyd00/index.php?id=2
文責:塾長 渡邊 豊(33期)
森林レクリエーションと地域再生
講師: 大浦 由美(おおうら ゆみ)先生(和歌山大学経済学部観光学科准教授)
プロフィール:信州大学で林業経済学(農学修士)、名古屋大学で地域資源学(農学博士)
その後名古屋大学助手・大学院講師をへて2007年4月より和歌山大学経済学部
観光学科准教授。
専門は森林・林業政策、森林資源利用論。
大学での授業科目は、森林レクリエーション論、森林資源利用論、観光入門、
地域農林業研究(大学院)の4講座。
参加者22名

本年度の研究わくわく人生塾は観光学科の先生による5回シリーズで実施しています。今回
は第3弾で、観光政策上重要な位置を占める「森林」によるレクリエーションにスポットを当
ててお話を頂きました。
(Ⅰ)観光(=Tourism)と森林の関係について
(1)観光の定義は、「人が日常生活圏を離れ、再び戻る予定でレクリエーション(身
体的・精神的な再生)を求めて移動すること」とすると、森林地域におけるレク
リエーシション機能を追求することは観光政策上大変大きな位置を占めることに
なるのである。
(2)とくに現在の日本では、本来の林業としての営みができる森林づくりが困難とな
っている以上、森林を観光産業の場として利用し、都市生活者のレクリエーショ
ンに役立てることが農山村側から見ての「持続可能な森林業の確立」につながり
地域再生になることになるのである。
(Ⅱ)当日の内容は、以下の3点です。
(1)わが国の森林レクリエーションの歴史
①戦前は森林の「保護・管理」に留まっていた。
②森林レク事業の始まりは、「国設スキー場制度」(1959年)である。
③1960年代は第一次レク開発ブームで、ゴルフ場建設ラッシュ、無秩序な開
発が行われ、社会問題となる。
その後1970年代にレクリエーション整備をすすめるべきとの答申がなされ、
「自然休養林制度(1968年)」「レクリエーションの森制度(1973年)
」が発足し森林の公益的機能を重視した政策が行われるようになった。
④1980年代にかけてバブル期を迎え「民活型大規模リゾート開発ブーム」が
起こったが、そのほとんどがゴルフ場・スキー場・ホテルの3点セットであっ
たためその結果自然破壊もすすんだ。
⑤しかし1990年代にはバブルが崩壊し、ほとんどが需要を超えた開発だった
ため「赤字」となり、レク施設の経営が破綻状態になっていった。
(2)近年の新しい試み
①レク経営が苦しくなるなか、ニーズの面でもスポーツ・レジャー型レクの利用
が激減する一方で「森林探勝・森林浴・体験型」等の新しい需要が起こり、森
林レクにおいて新たな試みがなされるようになった。
②それは、従来の「レク施設単独利用型」から「都市と農村との交流・協働・環
境保全型」へと転換されるようなったことである。
これは農林業の衰退、限界集落等の問題を抱える農山村側と環境問題、ストレ
ス社会等を抱える都市市民側とが、双方の交流・協働を通じこれら諸問題を打
開しようというものである。
③このようなことからエコツーリズム/グリーンツーリズムが起こり、また森林
浴から森林セラピーへの動きが見られるようになった。具体的には「健康保養
の森」指定(1998年)、森林セラピー基地公募・認定(2005年)、ロ
ングトレイル(遊歩道)整備等が行われた。
(3)今後どのような方向を目指すべきか
①このような取組は、現在のところ行政先行であるが、今後は基礎研究の充実、
人材の育成、地域の幅広い産業との連携を行い、一過性に終わることのないよ
うしなければならない。
②そして「交流・協働・環境保全」をキーワードに、森林レクを森林・地域再生
に不可欠な地場産業として育成していくことである。
(Ⅲ)まとめ
(1)大学のホームページをみると大浦先生の研究テーマは「豊かな森林を育む社会
経済システムの実証的研究」となっています。このテーマは自然資源豊かな和
歌山を背景とする和大の観光学科としても適切でかつ重要であると感じます。
今後は社会連携を深め、地域に根ざした研究を続けると述べておられます。
大いに期待したいものだと思います。
(2)当日の新聞(11月28日付各紙)で、小田学長の「来年度の観光学部発足」
の記者発表の記事が掲載されたこともあり、参加者から観光学科に対する期待
の声が多く出ました。
(3)地域再生は、今や全国的な最重要課題です。地域再生の情報発信が和歌山から
なされ、全国すべての自治体が卒業生の就職先になるよう願っております。
報告者:浦 義弘(大学17期)
以上

中部地区での国有林の研究が中心だった講師が、国有林のほとんど無い和歌山に赴任され戸惑いながらも熱心に活動
されている姿が心強く感じられました。
農水省も世界的な温暖化や環境問題の後押しもあり、本腰を入れ国有林の間伐と国産材の活用に動き出そうとしてい
ます。私有林の多い和歌山でも観光学部の新設を契機に講師が中心になり地域再生の新しい和歌山モデルを作り、森
林所有者を巻き込んだ地域資源の掘り起こしなど、セラピーを取り入れた裾野の広い観光振興への期待の声が上がっ
ておりました。
地域振興に産官学と我々柑芦会の知恵を融合して大きな波を起こして欲しいとともに、是非とも協力させて頂きたい
と思いました。
森林とリゾート法(ゴルフ場開発など)での環境破壊が山の保水力と川や海に大きく影響すると共に、人工林の針葉
樹の管理の大切さや里山での広葉樹の保全の必要性を実感したひと時でした。
そして、身体的、精神的な再生であるRecreationとは基本的人権であるということを再認識させて頂きました。
大浦先生、出張などでお忙しいところ人生塾のために興味深い研究資料とレジュメをご準備いただき、楽しい講義を
本当にありがとうございました。
参考: 『森林セラピー基地マップ』(社)国土緑化推進機構
http://forest-therapy.jp/modules/tinyd00/index.php?id=2
文責:塾長 渡邊 豊(33期)