2010年1月28日(木)午後6時30分~9時
いきいき人生塾
講 師:(株)阪急阪神ホテルズ代表取締役執行役員
森 俊宏氏

テーマ:「阪急・阪神グループ戦略の展開」
講師略歴
1974年3月 和歌山大学経済学部卒業
1976年3月 (株)新阪急ホテルズ入社
2003年6月 同社代表取締役専務
2008年4月 (株)阪急阪神ホテルズ代表取締役専務執行役員
2009年4月 同 経営統括本部長
よもやの阪急と阪神の統合という劇的局面を経て阪急阪神グループが誕生。企業風土の違いを乗り越え、どのように歩み始めるのか。興味が集まるなか、21人の聴衆で会場は溢れた。
講義内容
簡単な経歴
1974年に大学を卒業、2年間は製紙会社で働いた。しかし、第1次オイルショック後の深刻な不況もあり、巨大な生産設備を抱えるメーカーの苦しさを体験、設備のないサービス業の方が良いのではないかと思い、新阪急ホテルに転職した。しかし、サービス産業も製造業に劣らず厳しい仕事であることを実感している。
新阪急ホテルでは1年間フロント係をしたが、2年目に経理に移り、ずっと経理の仕事をしてきた。しかし、今ではもう少し他の部署も経験しておけば良かったかなと思っている。
この間の大きな出来事は、なんといっても2006年の阪神との統合であった。互いに阪神間に基盤を持つ企業として競い合ってきた阪急グループと阪神グループが一つになるなんて考えたこともなかった。しかし、阪急と阪神が一つのグループとなったことは、非常に良かったと思っている。
阪急阪神グループの戦略
2006年10月に阪急グループと阪神グループが統合され、持ち株会社として阪急阪神ホールディングスがスタートした。企業風土が異なる両グループの統合効果を発揮するため、人事の融合を図るとともに、「安心・快適」と「夢・感動」を届け、お客様の喜びを実現し、社会に貢献するとの企業理念を掲げ、業務を遂行している。
阪急阪神ホールディングスは、約200社の企業(従業員約3万人)で構成されているが、大きく分けて都市交通、不動産、エンターテイメント・コミュニケーション、旅行・航空輸送、ホテル、流通の6部門で構成されている。今のところ阪急電鉄や阪神電鉄などの都市交通や不動産事業で全体の営業収入の50%、収益の80%を計上している。
統合されるまでは各企業が独自に資金を調達し、利益目標を実現するための事業計画を遂行していたが、統合後は持ち株会社の阪急阪神ホールディングスが一括して資金を調達、各企業に配分するようになった。それによって資金の調達コストが節減され、投資の効率化が図られるようになった。
最近の話題としては、梅田阪急ビルの建て替え、甲子園球場のリニューアル、阪急京都線の摂津新駅、西宮ガーデンズのオープンなどがある。梅田阪急ビルでは13階までを阪急百貨店の売り場に、17階から41階をオフィスビルにする。2012年にグランドオープンするが、その時点で阪急百貨店の売り場面積は61,000㎡から84,000㎡に約40%近く増床する。また、摂津新駅はカーボンニュートラルステーションと位置づけ、雨水を活用、また太陽電池などでCO2の排出を51%削減することにしている。西宮ガーデンズは入場者目標は10%強下回ったが、売上高は約10%上回った。
ホテル業界の現状
ホテル業界は迎賓館としてスタートしたが、次第にリゾート型、そして最近ではビジネス対応型へと変化してきている。阪急阪神グループでは現在45のホテルを展開しているが、宿泊主体型ホテル「レム(remm)」の評判がよい。ここでは快眠をコンセプトにベッドや照明を工夫するとともに、疲れをいやすレインシャワーを設置したことも評判となっている。
しかし、ホテル産業は全体としては右肩下がりの状況にある。花博やUSJオープンなど一時的に売上げが増加した時期もあったが、トレンドとしては減収傾向にある。とくに、リーマンショック後のこの1年間は大幅に落ち込んでいる。業界内での値下げ競争も強まり、回復の兆しを見せていない。

質疑応答
(Q)統合で最も苦労したのは。
(A)人の融合ということです。役員人事も不公平感のないようにしており、年に1回はグループ内の幹部が集まり、懇談するなどの場も設けています。
(Q)鉄道部門は、統合によるシナジー効果を発揮しにくいのではないか。
(A)鉄道部門のことはよく分からないが、路線価値を高めるということで統合効果を発揮できるようにしている。今後の問題としては少子化がある。すでに通学定期券の売上げが減り始めたといわれている。
(Q)百貨店業界は売上高の減少が続いている。梅田界隈では大丸の増床や三越の進出などもあって競争が激化すると予想されるが。
(A)今後は厳しくなると予想される。阪急百貨店としての独自性を強め、魅力をアピールすることで、存在感を高めたい。
(Q)ホテルの売上げを伸ばすには海外からの観光客、とくに中国からの観光客の誘致が必要ではないか。そのためには旅行会社との連携が必要と考えるが。
(A)中国への観光客の取り扱いでは阪急交通社も健闘している。しかし、中国では現地の旅行会社が窓口になっているので、そこへのマーケティングが必要かもしれない。中国語のホームページもつくっている。
以上