2011年7月12日(火)18時30分から21時
研究わくわく人生塾
講 師:国立大学法人和歌山大学経済学部経済学科教授
大西 敏夫(おおにし としお)先生
博士(農学):大阪府立大学大学院農学研究科(修士課程)園芸農芸専攻 修了
参加者12名
テーマ:「都市農業(おおさかの農業)の役割を考える」
農業に関しては、高齢化とともに、自給率の問題など様々な議論がなされているが、
食糧と飼料と燃料における農業の最近の状況と大阪の状況をわかりやすく教えて頂いた。
では、講義の中でのポイントを少しだけご紹介させて頂きます。

1.先ずは、農業と農村の機能、役割について
①食料の安定的供給、②安全な食料の生産、③自然環境の保全、④社会環境の保全
の4つの大きな役割があるが、人と自然の望ましい関係づくりとしての人類と地球環境と
の共生、都市と農村の共生が重要になってきた。
2.日本の供給熱量ベースの食糧自給率は2006年には39%となり、先進国で最低の水準である。
こういう状況の中で、環太平洋経済連携協定(TPP)の動向が注目される。
3.日本では、800万トンの米の生産量に対して、輸入される穀類、果実、豆類、野菜、魚貝類で
約5000万トンという食料輸入大国になっている。
アメリカ元大統領は「食糧自給できない国は、国際的圧力と危険にさらされている国だ」とも
言っているので、やはり大きな問題なのだろう。
農業人口も世界の平均が40%に対して、日本は何と3%というのだ。
4.燃料としての穀物利用もあり、フード・マイレージやバーチャル・ウォーターという指標も重要
5.大阪・東京・名古屋などの都市農業の位置付けは、新鮮で安全な農産物の都市住民への供給、
身近な農業体験の場の提供、災害に備えたオープンスペースの確保、ヒートアイランド現象の緩和、
心安らぐ緑地空間の提供といった都市農業の機能や効果が十分発揮できるよう、これらの機能・効果
への都市住民の理解を促進しつつ、都市農業を守り、持続可能な振興を図るとある。
それでは、次に大阪農業の果たす役割や魅力と都市農業についてまとめてみました
①都市住民に生鮮野菜などを供給しているという役割
大阪の農産物の供給率は、野菜9%、果実7%、米6%(平成18年)
②みどり・景観(生活環境)、レクレーションの場、防災空間の提供等の役割
緑被率が3割を切ると心身の健康に悪影響が現われるといわれている
大阪における地産地消の取組状況としては、①自治体での推進計画づくり、②直売所、量販店や専門小売店
での地場産コーナー、③学校給食での地場産利用、④農産物のブランド化(エコ農産物、なにわ特産品、
なにわの伝統野菜)、農産加工での利用促進、農家レストランなど、⑤農家と市民との交流、試食会、各種
イベントなどがある。
これからの、大阪農業の展開では、地産地消と食育はもとより、市民的農地利用いわゆる市民農園の促進や
本気で農業に取り組もうという意欲ある農業担い手の育成と確保とその支援が重要になっている。

かつて大阪農業は、商業的農業の先進といわれていました。しかし戦後の高度経済成長以降、
とくに都市化の影響で縮小・後退を余儀なくされました。その大阪農業(=都市農業)の役割について、
現状を踏まえ、食と農および環境の視点から教えて頂きました。
参加者の皆様からは、農業の後継者問題や日本の農業の将来像がよくわからない中での、自給率問題や
数値に関して、様々な意見が出されました。
和歌山大学も地域の食と農の支援に力を入れていると伺いました。新たなモデルが楽しみです。
大西敏夫先生、お忙しい中、パワーポイントの資料をご準備いただき、興味深いお話を有り難うございました。
著書:共著:『
農業構造問題と国家の役割―農業構造問題研究への新たな視角 (現代の農業問題)
』分担執筆 筑波書房 2008年
『
都市と農村―交流から協働へ
』編著 日本経済評論社 2011年



報告・文責:研究わくわく人生塾長 渡邊 豊(33期)
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