和歌山の「蜜柑」の香りと、天指して伸びる「芦」のたくましさ、強さに因んで命名された。そしてこれを「かんろ」でなく「こうろ」と読ましている。




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2005年9月度研究わくわく人生塾
2005年9月27日(火)18時30分から21時

和歌山都市圏の構造転換を目指して−交通システムからのアプローチ−

講師: 和歌山大学経済学部 辻本勝久助教授(市場環境学科:交通システム論)
1971年三重県名張市出身 広島大学総合科学部卒 
地域活動: 和歌山地域経済研究機構IT研究会・港湾経済波及効果研究会など
趣味:観世流謡曲 スポーツ:サイクリング、バレーボール
参加者14名

平成18年を和歌山の「交通まちづくり元年に!」という、熱意溢れる講師の話に産官学民の新しい姿が見えてき
たことを実感し、うれしく思いました。
本来、航空システムが専門であるにもかかわらず、和歌山の貴志川線廃止問題が浮上してからは、住民からの熱い
声に何とか応えようと平成15年10月から今年1月までは存続運動に市民と共に学の立場で尽力し、「貴志川線
は、自動車依存病進展を食い止める防波堤」との思いのもとに見事存続を決定させたとのことです。
今は、そのうわさを聞きつけた近鉄伊賀線の沿線住民からの切なる存続の願いを実現すべく東奔西走している。
なんと、平成7年から今年までの10年間で廃止された旅客鉄軌道は31路線380キロにも及んでいるのだ。
人生90年と言われるシルバーライフ到来を鑑み、このままの自動車依存ライフではいずれ限界がやって来るし、
その時になって公共交通機関に改めて目を向けても、後の祭りになりかねないという話に危機感を感じた。

講演の為にスクリーンに映し出された資料は62枚にも及び講師の熱い気持ちが伝わってきました。
その中で特に印象に残ったポイントを報告させて頂きます。

和歌山市と周辺市町の人口変化を見ると、岩出町や貴志川町が大きく増加し、和歌山都市圏が拡散している実態がわ
かる。和歌山市の人口集中地区(DID)は人口密度が急速に減少し、ガソリン消費量が増加していることから、
「低密度都市は自動車依存型であり、エネルギー効率が悪く環境にも悪い都市」という定義に仲間入りをしてしまっ
たようだ。
自動車依存型社会は高齢者による交通事故の急増を招き、二酸化炭素の排出面でも自動車は1人を1km運ぶのに
47g排出するが、鉄道なら5gとなり、地球環境にも優しいと力説。
その上、中心市街地での駐車場増加は歯抜け状になりその市街地の魅力を失わせてしまうと警告している。
道路の整備と維持には和歌山市で約73億円、県で625億円もの莫大な金額が掛かっているというのだ。
当然のことながら人口密度が低いと、一人当たりの公共施設(公園・集会所・公民館)の整備費用はかさみ、
上下水道や道路などの社会基盤の整備・維持効率は低下するとのこと。

和歌山都市圏の持続可能な発展の為には、(1)経済の開発(2)コミュニティの開発(3)エコロジカルな開発
の3つの開発をうまく行う必要がある。そこで2003年に、和歌山市をどうするのかという市民参加のグランドデ
ザインの素案ができ、その中には和歌山アトミック・コンパクトシティ構想が盛り込まれ、住宅集中エリアと緑化
エリアとのメリハリを付け、既存の鉄道や道路を最大限に活用し徒歩・自転車・公共交通で誰もが不自由なく
暮らせる町への転換を目指している。
ここには、次世代路面電車(LRT)の導入と活用も提案されている。

今回の貴志川線存廃問題から今後の取り組みについても熱心にお話頂いた。

貴志川線は平成8年度に約274万人の旅客輸送量であったが、同年12月のバイパス開始などの影響で減少に転
じ、平成16年度には193万人となり、コスト削減努力と利便性への積極投資をしたが、残念ながら年間4億円も
の赤字を埋めることは出来なかったらしい。

1年間は住民は行政頼みで、行政は南海電鉄まかせで、いっこうに進展が無かったが、平成16年の9月にNHKで
放送された「難問解決!ご近所の底力」以降、WCAN(和歌山市民アクティブネットワーク)や貴志川線の未来を
つくる会(約6300人)が活発な存続運動を開始した。WCANは市民団体として初めて費用対効果を分析し、
この運動が県、市、町に欠損補助の支出や鉄道用地の取得を決定させ、今度は、住民総意のラブレターが
岡山電気軌道の経営者の心を打ちついに和歌山電鐵が誕生することとなった。

WCANという中心市街地活性化などを目的とする市民活動組織があることをご存じだろうか?
代表は小田章・和歌山大学学長で、200人近いメンバーが様々な分科会を造り活動している。
WCANの交通まちづくり分科会(辻本助教授が会長)は、6大プロジェクトを計画し交通まちづくりの展開を
図っていこうとしている。

1.交通まちづくり会議(仮称)などの大規模シンポの開催・・・重要性を市民へ印象づけ
2.交通まちづくりサロンの開催・・・・・・・・・・・・・・・ミニ講演会と意見交換会
3.市民向けのやさしい交通まちづくり教本などの作成と配布・・シンポやサロンの成果を市民に情報公開
4.貴志川線沿線住民を対象としたモビリティ・マネジメントの実施
5.和歌山都市圏所在の事業所を対象にしたモビリティ・マネジメントの実施
  *モビリティ・マネジメントとは、ひとりひとりのモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向
  (自動車から自転車や公共交通利用へなど)に自発的に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした
   新しい交通マネジメント施策
6.まちづかいマップの作成と転入者や生徒への配布
和歌山に新しく転入される人には、公共交通マップを無料配布し、公共交通利用の習慣を付けてもらう。
その為にも市民が自らの手と足で情報収集した使い勝手の良い情報マップを作成するなど、適材適所、市民参加型の
交通システムのあり方を強調された。

鉄道存続運動の常は「愛は時間を忘れさせ、時間は愛を忘れさせる」というドイツの諺通りだという。
岡山電気軌道の経営者を感動させた市民からのラブレターの趣旨は、「地方鉄道の運行を将来に亘って持続する責任
は、運営会社や行政だけでなく、地域住民にもあるので、積極的な乗車、駅の清掃・植裁、集客イベント、交通状況
調査分析、市民ファンド、交通ビジョンの提案、地域住民への啓発活動を積極的に行ないますから、是非とも我々の
仲間としてお迎えさせて欲しい。」という熱意に溢れたものであった。この気持ちを忘れること無く、持続して行っ
て欲しいと講師は願っているようだった。
今回、新電鐵の組織に運営委員会として住民が参加しているのは新しいモデルとして興味深いものがある。

国立大学法人として地域に根ざし、地域の役に立つ本当に生きた経済や交通システムを学べる最近の和歌山大学生は
羨ましいという声も聞かれ、大学生がもっと中心市街地の活性化に参加し易い交通アクセスなども必要ではないかと
いう意見も出されました。質問も活発に出されておりました。
今後は、辻本助教授の取り組まれている「交通まちづくりと和歌山の活性化」を多くの柑芦会会員にもPRし、
和歌山が持続可能な発展をして行く姿を応援することができればと思いました。
参加者全員、辻本助教授の若さと情熱があれば、和歌山の未来は明るいと確信しました。
本日は本当にありがとうございました。

共著:『空間の社会経済学』日本経済評論社 他

辻本研究室の活動をタイムリーに知りたい方はこのブログをご覧下さい。
http://tsujimotolab.livedoor.biz/


報告者:塾長 渡邊 豊(33期)

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