柑芦会(和歌山大学経済学部同窓会)大阪支部
和歌山の「蜜柑」の香りと、天指して伸びる「芦」のたくましさ、強さに因んで命名された。そしてこれを「かんろ」でなく「こうろ」と読ましている。
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1月度「研究わくわく人生塾」
2006年1月17日(火)18時30分から21時
リレーションシップバンキングの経済学
講師: 和歌山大学経済学部 内田浩史(うちだひろふみ)助教授(経済学科.主担当科目:ファイナンス)
1970年神戸市出身 大阪大学経済学部経済学科卒(41期)、京都大学経済研究所講師、
和歌山大学助手・講師を経て現職
所属学会: 日本経済学会、日本ファイナンス学会、日本金融学会他
趣味:読書 スポーツ:テニス
参加者10名
乗杉経済学部長から数式や数字が沢山出てくるので心しておいてくださいと言われていたので、気合いを入れて臨
みましたが、講師からは全く数字は出さないのでリラックスして聞いて下さいとのことで一安心でした。
リレーションシップバンキングとは、企業と銀行との密接な取引関係のことであり、日本ではかなり以前から存在
したものですが、リレーションシップバンキングという言葉自体が市民権を得たのは金融再生プログラムの一環と
して政策当局が使うようになって以来とのことです。
経済学における分析としては、ノーベル経済学賞の受賞対象となった「情報の経済学」などによって分析のための
理論的基礎が確立して以来のことであり、1990年代半ばから欧米を対象にして多くの研究が行われてきている
そうです。本日は内田講師が執筆された「日本におけるリレーションシップバンキング分析序説」という未発表論
文に沿って、そのエッセンスを易しく教えてくださいました。
(講師)
日本では主に大企業を対象にしたいわゆる「メインバンク制度」に関する分析は多かったものの、中小企業に関し
てはあまり分析が行われていませんでした。昨今日本では、銀行の重要性が低下する中で大企業と銀行の関係は密
接でなくなってきていますが、中小企業と銀行の関係は依然として深く、平均30年程度の長い付き合いが見られ
るそうです。銀行と企業の「リレーションシップ」には(1)長期にわたって取引を行う(2)当座預金や手形な
ど多様な取引を同時に行う、という2つの側面があります。こうしたリレーションシップが深まることによって、
貸手が借手を良く知ることを通じて情報が蓄積されます。すると、良く知らない場合(「情報の非対称性」が存在
する場合)に発生する信用割当(貸し渋り)問題などを解決するメリットがあるそうです。
ただし、借手に関する情報にはソフトな情報(文書化や契約を結ぶのが難しい情報)とハードな情報(帳簿他外部
からの観察が可能な情報)があり、リレーションシップが深まることによって蓄積されていくのはソフトな情報の
方なのだそうです。大銀行ではなかなかソフトな情報を集められず、小回りもききにくいのですが、中小金融機関
はこうした情報蓄積に長けているものと考えられます。この点で金融機関の間に棲み分けが起こる可能性があるそ
うです。さらに、リレーションシップが深まることによって、情報の蓄積以外にリスクシェアリングを促進すると
いったメリットをもたらす可能性があります。ただし、分析を行う際には、リレーションシップのメリットが経済
全体としてもたらされるものか、それとも個々の貸手(あるいは借手)にもたらされるものなのかに注意する必要
があるのだそうです。
(受講風景)
こうしたメリットが現実に日本において観察されるのかどうかをデータから確かめるのがリレーションシップバン
キングに関する実証分析です。実証分析では、取引の長さや多様性を表すデータと貸出利用度や貸出金利との関係
を統計的に調べるのだそうです。内田講師が最近行った研究によると、リレーションシップが深まることによって
貸し渋りが緩和され、また貸出金利が低くなることが分かったそうです。ただし、この関係は、監査を受けていな
い中小企業が、あまり競争に晒されていない信用金庫から借りる場合にしか見られなかったそうです。
また日本ではリレーションシップが深まるほど担保を要求される確率が高まるという結果も得られたそうです。
( この論文は,経済産業研究所のホームページから入手可能です
:
http://www.rieti.go.jp/en/publications/summary/06010009.html
)
日本のリレーションシップバンキング行政としては、金融再生プログラムの一環として金融庁からアクションプロ
グラムが示され、現在は新しいアクションプログラムが実施されています。その下で、各金融機関は「地域密着型
金融推進計画」を提出することになっており、金融庁では進捗状況を公表しています。近畿地方における各銀行の
実態については、近畿財務局のホームページで確認することができます。
(
http://www.mof-kinki.go.jp/file/336_C1L1_new-ap-kinki.pdf
)
講義の後のディスカッションでは、参加者から大手銀行ではまだまだ貸し渋りが多いことが指摘され、中小銀行の
リレーションシップバンキングへの期待の話が活発に出されていました。また、大手銀行や地域金融機関における
リレーションシップの実態について、参加者からさまざまな紹介があるなど、充実した人生塾になりました。
皆さん、若手の内田先生が将来政府の諮問機関などで活躍されることを期待しております。
内田先生、本日は本当にありがとうございました。
報告者:塾長 渡邊 豊(33期)
[2006/01/23 09:58]
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