柑芦会(和歌山大学経済学部同窓会)大阪支部
和歌山の「蜜柑」の香りと、天指して伸びる「芦」のたくましさ、強さに因んで命名された。そしてこれを「かんろ」でなく「こうろ」と読ましている。
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3月度研究わくわく人生塾
2007年3月9日(金)18時30分から21時
CSRとビジネスのリデザイニング
講師:高岡 伸行(たかおか のぶゆき)和歌山大学経済学部助教授
和歌山大学経済学部卒(40期)
名古屋大学大学院経済学研究科・経済学博士(名古屋大学)
専門:「企業と社会」論,経営組織論、
参加者14名
今企業経営で最も重要な考え方は、CSRであると言われる。テーマの論旨は、このCSRは
単に企業のリスク管理や継続性を論じる場合だけではなく、企業発展の原動力であるイノベー
ション(経営資源の新結合)やイノベーションを創発するためのビジネスのリフレーミングや
リデザインを誘発する素地に満ちている,ということである。
むしろ先生は、CSRの実践の中にイノベーション創発の機会がある、と指摘されました。
ただし,それには従来のビジネスという概念や発想を打ち破る企ての思考が肝要であり,その
方法の一端がリフレーミングやリデザインという考え方でもある。
お話の中で私が重要と感じた事項は次の3点です。
まず第一は、現在のCSRは従来のCSRとは全く異なるということです。CSRは社会的責任
という言葉で従来からも言われてきたが、それは経営の結果としての「利益の分配」の問題とし
て論じられてきたのである。しかし現在のそれは「利益の獲得の仕方」の問題として論じている
のである。何をいまさらCSRなんて・・・といわれる諸氏がおられるかもしれないが、現在の
CSRは「利益獲得の問題である」という視点を今一度考えてみるとよいと思われる。
(はずかしいながら私自身、従来のCSRとの区別が明確でなかった。)
第二に、CSR実践のそのものの中にイノベーション創発の機会が含まれているということである。
CSRとは具体的に言うとステイクホルダーとのあり方を問題とすることである。すべてのステイ
クホルダーとは言わないが,中には当然企業にとっては「対立」あり「差異」であり「異物」と捉
えられるステイクホルダーも存在し,関わらねばならないが、現在のCSRに求められている課題
の本質は,この対立関係にあると思われるステイクホルダーをも含めと、経済的・環境的・社会的
な面で<ともに歩む>ことであり<対話>をすることにあるのである。
この「対立」・「差異」・「異物」を組織の中に「巻き込み」「対立を仕込む」ことでイノベーシ
ョン創発の<場>がつくられるのである。
第三に、それでは、そのイノベーションのきっかけは何かというと、<気づき>となって現れると
いうことである。<探す>ということではなくて<気づく>という概念が創発の機会になるのであ
る。具体的な思考としてシネクティクス(創造工学)やラテラルシンキング(水平思考)という概
念があり,その効果を説明する概念として,「幸福な偶然」を意味するセレンディピティーがある。
私はこの<気づき>ということが、今後多方面で大変重要だと感じています。私たちを取り巻くい
ろんな問題も最終的には人間の感性あるいは感受性に帰着するように思えるからです。これからの
組織のあり方として、この感性という一見個人的な属性を、企業が組織として、<気づき>の
<場>が作ることにより、個人的能力の限界を超えることができるのだと考えています。
なお当日、参考になる絵が紹介されました。
ひとつは、イノベーションの事例として、日本の浮世絵が影響を与えた印象派の絵画の一例として,
ゴッホの絵:「スタリー・ナイト(星月夜)」1889年と,モダンアートの礎にもなった,キュ
ービズムの先駆けである,ピカソの絵:「アビニオンの娘(女)たち」1907年,です。
これらの現在では「当たり前」であったり,主流派的な絵画の様式も,当時は画法的にも絵画とい
う存在やその展示方法についても,全く異質であり,様々な対立と差異(その差異の一つが東洋の,
日本の浮世絵という絵画の技法や世界観だったそうです)を取り込んで産まれたスタイルであるこ
とを強調し,それがイノベーションの創発と同質であるということで,イノベーションおよびその
創発の事例として,これらの絵画を取り上げられたのです。
そしてそういう当たり前を当たり前として受け入れるのではなく,問い直してみる作業がリフレー
ミングであり,それに基づいて当たり前を企てし直す作業がリデザインなのですが,その例として
クルマのデザインの変遷を数枚の写真を使って紹介されました。
「車」のデザインの変遷上画期的といわれるピニンフェリーナ社デザインのシシタリア(1947年)
は現代の感覚からみればデザイン的に特徴を見いだせない程ですが,その特徴はフェンダー内にタ
イヤを内包した外観にあります。それまでクルマのデザインは,クルマ以前の乗り物である,馬車
をモデルとしていたため,タイヤ(車輪)を覆う部分がボディーから突起しているものが当たり前
になっており,それはT型フォードに始まり,T型フォードビンテージ1929年式 →B型フォー
ドセダン1934年式→クライスラーエアープロー1930年代後半と続き,シシタリアの登場まで
問うべき価値を見出されもしない「当たり前」になっていたそうです。
シシタリアの登場はクルマのデザインの革新であるだけでなく,クルマという製品のリデザインを通
じた,クルマそのもののイノベーションでもある,ということで,こうした事が紹介されました。
革新的なデザインや絵画の成立の過程をスライドでわかりやすく説明いただき、リデザインというこ
とがよく理解できました。
(著作権のことがあり皆様にこのスライドを紹介できないのは残念です。)
CSRとイノベーションは、極めて現代的で広汎なテーマですがその基本的な部分をわかり易くご説
明いただきました。テーマを見て初めての方が新たに3名ほど参加されました。
「研究わくわく人生塾」にふさわしいテーマと内容でした。
報告 浦 義弘(17期)
わくわくする講義のポイントは「脱構築」という根本を作り直すということにあり、現状の枠組みを
組み替える「リフレーミング」、何故と問うことすらしない物や事象について問い直し、気付の観点
で自己対話の中で自分の思考枠組を考え直す「リデザイン」の定義から始まり、今までは当たり前の
自動車のタイヤ上部のフェンダー(泥よけ)内蔵のデザインも、馬車からの発想の作為的なデザイン
という。
写真で構成されたプレゼン内容が大変分かり易く、会場は一気に話にのめり込んで行きました。
そして、経済ピラミッドの頂点である「利益」を考える上でのCSRついて、
(1)稼いでからの社会還元(APO)(2)そもそも利益を出す前の段階での社会還元(BPO)
の考え方があり、関係する利害関係者(ステイクホルダー)をいろいろ巻き込むBPOの方が新しい
発想が生まれやすい、異種の対立を仕込む大切さを教わりました。
受講者からは、会社として社会還元でパソコン教室を行うのもCSR活動としてよいか?
70年代の公害問題を通しての企業の社会的責任とCSRの違いは何か?
などの質問や意見も多く出され会場は盛り上がりました。
今の日本での企業不祥事の背景には日本人の「もったいない」と「あの人が言ってるから」という属
人思考が大きいと感想を述べられた。確かに、ルールに感情を入れてはいけないと実感しました。
若い後輩の先生がこれからいろいろな研究の成果を出されると参加者一同実感して終わりました。
ちょっとしたことに「何でだろ〜」と唱えることで新しい気づきを感じる毎日です。
高岡先生、お忙しいところ人生塾のために興味深いプレゼン資料とレジメをご準備いただき、大変に
分かり易いる講義をいただき、本当にありがとうございました。
参考書籍:「企業の社会的責任論へのステイクホルダー論的アプローチ」,
松野他編著『
「企業の社会的責任論」の形成と展開
』(ミネルヴァ書房所収)
またわくわく人生塾で発表させていただいた内容にやや関連した論文が
ございますので,お知らせいたします。
「CSRマネジメントシステムの設計思想」『経営と経済』84巻,3号,pp.253-82.
文責:塾長 渡邊 豊(33期)
[2007/04/05 13:22]
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